横断的に検索できる用語集を作ってみた。

テスティング、ITIL V3の用語集を統合して横断的に検索できる用語集ツールを作成したので、利用してみてください。IEEEの用語集(英語のみ)も統合しています。例えば、以下のリンクから「incident」をダイレクトに検索してみてください。それぞれの知識体系でどのように定義されているかが掴めます。
「incident」を検索してみる: http://squaring.jp/term/direct.jsp?word=incident
用語集ツール: http://squaring.jp/term/

用語集の原本

ITIL V3の用語集は、2006年に公開されたITILV3_Glossary_v3.1.24と2007年に公開されたITILV3_Glossary_Japanese_v3.1.24をマージしています。見出し語を 643 件登録しています。

テスティング用語集は、2010年に公開されたISTQB-Glossary-2.1を網羅しています。独自に解説しています。見出し語 741 件を登録しています。JSTQBの古い用語集(2007年対応版)は参照していますが、訳におかしなものが多く、一貫性も十分とはいえません。なんとか正しい用語集が作りたくて、こつこつと時間をかけて訳しました。JSTQBとの差異が明らかになるようにコメントを添える形式で提示していますので、JSTQBの学習にも勿論、利用できます。
【2011/04/23追記】JSTQBの最新用語集2011が公開されたので、それをもとに再確認して、整合性を確認済みです。

また、IEEE CSで2010年公開された用語集IEEE_CS_SE_Vocabularyも見出し語 3,435 件を登録しています。こちらは膨大ですので英語のみです。原本を読み込む際に、うまくパースできていない部分もあり、適宜修正中です。ISTQBでもかなり参照されており、本来の意味がどうであったかを参照するには有効です。

用語集の特長

用語集ツールの特長は、まず、日本語と英語のどちらでも検索でき、両方が並んで表示されることです。対訳が疑わしい場面でも直ぐに原文が参照・照会できます。なぜ、こんな辞書がこれまでなかったのか不思議です。厳密に・正確に学習したい人には重宝すると思います。ぜひ、JSTQBで翻訳を担当されている方にも参照していただけたらと思います。

また、3つの辞書を横断的に検索できることも特長です。各知識体系で定義が微妙に異なる用語もあります。これらの差異も容易に把握することができます。error, incident, defectなどの一般的な用語がどのように使い分けられているかが分かるので、本を書かれるような方には重宝するかと思います。

用語の解説では、多義語や引用を当然ハイパーリンクしているので、連続的に意味を辿ることができます。また見出し語(entry)の検索だけでなく、解説テキストからも検索が可能です。用語が一貫性をもって表現されているかどうかを確認することもできます。

JSTQB対訳の不備の指摘

JSTQBの古い用語集も参照していますが、やはり、結構な不備がありました。致命的なものを以下に挙げておくので、次回リリース時には是非、改善していただけたらと思います。細かい部分は、ツールで直接参照してください。

■usabilityを「有用性」と訳されていたが「ユーザビリティ」のままでいい。全てが確信的に「有用性」で統一されていた。ISO/IEC 9126にしたがっているのでせいぜい「使用性」でもいい。「有用性」と訳すとavailabilityやutilityと誤解してしてしまう。
【2011/04/23追記】JSTQB2011の用語集で確認したが、見出し語は「ユーザビリティ」になっていたが、それ以外のところは全て「有用性」のままだ。シラバスでは「使用性」と訳されているところも残っている。

complianceを「法令遵守」と訳しているが、これもISO/IEC 9126に準じた定義が挙げられているので「標準適合性」と訳すべきだ。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも改善されていない。

■incidentは「Any event occurring that requires investigation.」と定義されているが、JSTQBは「発生した事象中」と訳していた。「発生する」が正しい。「発生した」と訳すと、テスト後にしかインシデントが識別できないことになる。インシデントはテスト前に識別することもできる。IEEEでは、もたらす可能性のあるイベントも対象としている。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも改善されていない。

■defectの説明で「A defect, if encountered during execution, may cause a failure of the component or system.」を「故障が引き起こされる」と言い切っていたが「故障が引き起こされるかもしれない」としておかないと正しくない。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも改善されていない。

■decisionを「デシジョン」と訳したり「判定」と訳したり不統一だ。「デシジョン」で全て統一すること。例えば、紛らわしい「decision condition coverage」と「condition determination coverage」も「デシジョン条件カバレッジ」と「条件判定カバレッジ」となり、少しは誤解しにくくなるだろう。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも改善されていない。

■operationalはほとんど「運用」で統一していい。「操作」と訳したものが多かった。【2011/04/23追記】JSTQB2011では一部まだ改善されていない。

■equivalence partitionsを「同値分割」と訳しているが、これは分割行為ではなく分割された部分を指すので「同値領域」の方がいい。equivalence partitioningは「同値分割法」のままでいい。【2011/04/23追記】JSTQB2011では一部まだ改善されていない。

■expected resultは「予想結果」とされているがシラバスでの表現は「期待結果」なので、期待結果で統一すること。【2011/04/23追記】JSTQB2011で改善されていた。

■featureは、ISTQBでは機能(function)や機能性(functionality)に関連する非機能特性や制約のことを言っているので、「機能」とは訳さずに「フィーチャ」のままとすること。
【2011/04/09追記】JSTQBの最新用語集で確認したが、見出し語は「フィーチャ」になっていたが、なぜかsoftware featureの方は「ソフトウェア機能」のままだ。【2011/04/23追記】JSTQB2011で改善されていた。

■setを「組み合わせ」と訳すケースが多いが単に「集合」で統一しておきたい。combinationsとの差異で誤解する。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも改善されていない。

■domainは単に「ドメイン」ではなく、「ドメイン/定義域」と併記しておきたい。入力定義域・出力定義域などと整合していなかった。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも改善されていない。

■その他、開始基準・終了基準を入口、出口などと訳している箇所があった。changing requirementsを要求管理と訳している箇所があった。などなどだ。【2011/04/23追記】JSTQB2011でも一部まだ改善されていない。