模擬演習システムはツールの1つに過ぎない。

今回、スクエアリングサービスとして提供しているテスティング基礎コースとテスティング中級コース(管理編)をかなり利用していただいた。ただ、利用者の傾向をみていると、ツールへの過信や依存度が高過ぎるかなという懸念を感じた。サービス提供者としては矛盾する話なのだが、認めるべきことは認めよう。

提供できる模擬問題は有限である。試験範囲のすべてを網羅できている訳ではない。ちょうど全数テストが不可能なように、リスクの高い部分(試験に出そうな部分、利用者が苦手としているであろう部分)にフォーカスすることしかできない。その一方ではシラバスを広く網羅しておく必要もある。問題数が多ければいいというものでもなく、利用者が投入できる学習時間を予測して、設問数を決める必要がある。

実は、当初の構想は、たとえば300問を準備し、90%の270問をクリアされたら学習はほぼ終わるだろうというものだった。しかし、300問を用意しておくと学習者は必ず300問すべてを正解するまで繰り返す。99%の利用者がそうだといえる。日本人のすばらしい気質というか、淋しいさがなのかもしれない。重箱の隅に残ったごはん粒1つでさえ残さずに食べつくすという感じなのだ。私自信もまぎれもなくその通りだ。だから最後の1粒までを容易に完食できるように「根こそぎモード」というものまで設けてしまった。

スクエアリングサービスは非常に有効なツールである。しかし、所詮はツールの1つに過ぎない。ツールをどのように活用するかは利用者の判断だ。ツールは万能ではないことは理解しておいて欲しい。ツールは非常に便利だし、学習もゲーム感覚で進めることができる。スクエアリングサービスはその点において、非常に優れていると自負できる。だが、利用者があまりにツールに依存してしまう傾向をみていると危惧も覚える。ツールは、試験範囲のすべてを網羅できている訳ではないし、偏った視点でしか捉えていない危険もある。JSTQBを例にとるなら、シラバスを読んで理解することが学習の基本である。たとえ、誤訳が多くて当てにならないにしても、どこが誤っているか判断しながら読み込んでおく必要がある。市販の教科書本もツールの1つといえる。ツールは、完全に最新の試験やシラバスに追従することはできない。費用対効果の面でも追従はできないのだ。

模擬演習システムは、学習の初期や中期においては非常に効果的だ。しかし終盤においては、用意された設問数が有限であることから、再出題の確率も高くなり、初期や中期に比べて、効果と効率が低下するといえる。復習も必要であるので「仕上げモード」という演習を用意はしているが、効果と効率はそれほどいいものではない。

シラバスを再度熟読してみること、他のサービスや教科書本と併用することは、有効である。勿論、模擬演習システムは、それだけを単独に利用して、試験に合格できることを目指して構築はしている。それは、他のサービスや教科書本でも同じだろう。ただし、学習の終盤でのパフォーマンスを客観的に考えると、シラバスの再読、他のサービスや教科書本との併用の方が、より有効であると認めざるを得ない。利用者はその点を理解するべきだろう。

最後の1粒までを完食し、徹底的に復習を繰り返すことは、サービス提供者としては非常にありがたい。だが、利用者の最善の学習効率を考えると、ひととおりツールを利用して終盤に到達したら(つまり、ひとたび設問を100%を網羅したり、ひととおりの復習が終わったなら)、シラバスの再読、他のサービスや教科書本の利用などアプローチを切り替える方がベストである。そして、回帰的にツールでの復習という学習パターンをお勧めしたい。

このあたりのアドバイスが事前に、あるいはリアルタイムにできなかったことを後悔している。