BABOK 2.0 #4 日本語訳

昨日、1つのEEP(Endorsed Education Provider)が実施するBABOK2.0の無料説明会に参加してきた。当然、教育コースのPRが目的で実施されているのだが、いくつかの情報が入手できた。

まず、BABOK 2.0はこれまでIIBAからPDFをダウンロードすることしかできなかったが、アマゾン.comにて製本されたものが購入できるようになったそうだ。また、コミットはされていないが日本語訳も8月末にはリリースされるだろうとのこと。きっとPDFのダウンロードだとは思う。

Bisiness Analysisは「ビジネスアナリシス」と訳すらしい。訳さないらしい。ビジネス分析としてしまうと範囲が狭いイメージがあるのだろう。たしかに、ビジネス分析では、事業分析・業務分析といった狭いタスクのようにも感じる。ビジネスアナリシスは、BABOKで扱う知識領域そのものでもあり、一連のプロセスや技法の集合でもある。ビジネスアナリシスの知識領域でそのプロセスを実行する人を「ビジネスアナリスト」と呼ぶ。

ITILでも知識領域とその内部の活動の訳で苦労しているようだった。たとえば、Service Designの知識領域を「サービスデザイン」と呼び、その活動を「サービス設計」と呼ぶといった具合だ。

ビジネスアナリシスにはソリューションを開発した後の妥当性確認を含んでいることに着目すべきである。スパイラルなライフサイクルモデルで一連のプロセスを反復すること、ITILでいうところの継続的なサービス改善を意識しており、それらを包含している。またソリューションはITソリューションのみではない。プロセスでもいい、人系や組織の改善策でもいいのだ。業務プロセスの変更、組織の変更、アウトソーシングなどもソリューションとなる。

BABOK2.0の知識領域は、以下のように訳されると思われる。正確なところは確認できていない。


【1】ビジネスアナリシスの計画と監視(Business Analysis Planning and Monitoring)
【2】要求の管理とコミュニケーション(Requirements Management and Communication)
【3】引き出し(Elicitation)
【4】エンタープライズアナリシス(Enterprise Analysis)
【5】要求アナリシス(Requirements Analysis)
【6】ソリューションの診断と妥当性確認(Solution Assesment and Validation)
【7】基礎能力(Underlying Competencies)
個人的には【4】エンタープライズ分析、【5】要求分析の方がいいとは思う。assessment=診断と訳すとちょっと違うかなという感じがする。アナリシスを訳さないならアセスメントだってそのままでいいだろう。

話が戻るが、BABOKではBisiness Analysisとは何かの説明の冒頭で「・・・のタスクと技法の集合である」と言っている。BABOKの説明ならわかるが、Bisiness Analysisとはの説明では不適当な感じを受ける。いきなり冒頭から戸惑わされた。Bisiness Analysisは広い知識領域であり、そのなかでのベストプラクティスをタスク、技法、基礎能力の視点で体系的にまとめたものがBABOKであるといってくれたほうがいい。

ちなみに説明会の雰囲気から、BABOKに関心を寄せている人たちの様子がすこし見えてきた。まずユーザー側の熟練者たちという感じだ。開発側の若さはない。技術的なこと、技法や作業成果物の具体性はなく、むしろ精神論・モチベーションが重視されているかのようだった。要求開発など実際に現場でやったことのない方々のように見えた。ユーザー側でいかにベンダ依存にならずに提案依頼書(RFP)を書くか、かけるようになるかに重点がある。開発側より、ユーザー側にBABOKへの関心のある方が多いのだろう。

BABOKはたかだか270ページしかない。PMBOKの半分、ITILの10分の1といった感じだ。またCBAPでも上級のビジネスアナリストだけでなく、よりランクの低いロールも扱おうとしている点からもユーザー側の意識がうかがえる。顧客からのインタビュー、顧客との要求の合意、妥当性確認など顧客側と協働して、共通認識しながら行う必要があるので、よりユーザー側に合わせた視点や技術レベルになっているのかもしれない。