「ソフトウェア・テスト PRESS 総集編」を立ち読みしてみる。

JSTQB Advanced試験の対策にもなると推奨したブログもあったので「ソフトウェア・テスト PRESS 総集編」を川崎BEの有隣堂で立ち読みしてみた。お目当ては町田さんらの書かれた「テストマネジメント実践入門(実務編/ケーススタディ編)」の特集だ。2,500円という大金は私には払えないので、立ち読みで済ませた。

2部構成で前半は、Advancedシラバスの概要をテストプロセスにそって説明され、後半はケーススタディとしていくつかのシナリオが挙げられている。感想といくつか気づいた点を挙げておこう。


(1) 記事は「JaSST'11 Tokyo(2011年1月25日)」において発表された「テストマネジメント入門」の内容と同じだった。ネット上でもPDFが入手できる。「1.JSTQB認定テスト技術者資格 Advanced Level のご紹介」だ。

(2) 前半はAdvancedシラバスの概要をテストプロセスに沿って読みやすく説明されている。シラバスを一読したあとにこの記事を読むとよく理解できる。

(3) テストケースを管理するツールの説明が途中で、ぷっつりと途切れていた。これは筆者の責任ではないので、可哀想ではある。なんでこれがレビューでチェックできなかったのか、校正できなかったのか、なさけない限りだ。

(4) 前半で気になった箇所が1箇所ある。テスト終了作業の扱いだ。終了作業の位置づけがおかしい。間違いとは言いきれないが、誤解を招くので、もっと工夫して表現されるべきだったと思う。VモデルやWモデルを大切にするなら、あるいはプロセス指向であるなら、終了作業は開始作業とのV字で表現されないと分かりにくくなる。記事では、テスト終了作業をレベルテスト計画に対応付けているが、そうすると、プロジェクト計画やマスターテスト計画に対応するものがないことになる。


プロジェクト計画     ー   プロジェクト終結
  マスターテスト計画  ー  終了作業(全体) 
    レベルテスト計画 ー 終了作業(テストレベルごと)
のように明示してやるべきだったと思う。プロジェクト終結はPMの範疇なので語っていないのだろうが、プロジェクト計画を持ち出したなら、それに呼応して簡単な説明が加えられるべきだろう。シラバスで語られる「終了作業」は確かに、レベルテスト計画に対応するものとマスターテスト計画に対応するものがある。記事では、上記の「終了作業(テストレベルごと)」しか語られておらず、「終了作業(全体)」の方が軽んじられているように読めた。でも実際はどうだろう。テストレベルごとに反省会(振り返りミーティング)をすることが浸透しているのだろうか。せいぜい全体の終了時に行う程度ではないか。
テストレベルごとに独立性の高いチームにアウトソースするような場合を想定しているのかもしれないが、その場合には、調達と受け入れが発生することになり、JSTQBシラバスでも語られていない領域だと思う。SLCPの共通フレームやCMMIの調達(CMMI-ACQ)を参照すべきかもしれない。

(5) 後半のケーススタディでは2点ほど気になったところがある。1つは「インシデント分析」についてだ。インシデントの分析ではなく、欠陥の分析であるべきだ。開発側ではなく、テスト側の視点になっているせいなのかもしれないが、インシデントはテスト対象の欠陥とテストウェアの欠陥が含まれることが意識できていない記述になっている。それらを一緒に語ってはいけない。テスト対象の欠陥を語る必要がある。インシデントの分析ではなく、欠陥の分析だ。インシデントと欠陥は違うよと、シラバスで何度も強調されている。もっと意識的に用語を使い分けるべきだろう。

(6) 後半のケーススタディでは、もう1点、レベルテストのエスカレーションの話がおかしな感じがした。エスカレーションと唐突に用いられているが、何をどこからどこへエスカレーションするといっているのか分からない。テスト側から開発側にエスカレーションするのか。テストレベルを上位のテストレベルにエスカレーションするといっているようにも読み取れるが、本当か。そもそもテストレベルにはそれぞれ目的があり、目的が異なり、単純にはエスカレーションできないはずだ。現場では常套的なことなのか。

また「受入テスト」という表現が怪しく感じる。おそらく、エスカレーション、受入テストも自社において慣用的につかわれているのだろうが、記事としては紛らわしく感じる。受入テストと表現されているものは、受け入れテスト(acceptance test)ではない。まさか、「受入」と「受け入れ」で使い分けているのか。たしかに昔、受入試験という言葉をきいたこともあるが、一般には、それこそ受け入れられないだろう。用語集に沿うなら事前テスト(予備テストまたはインテークテスト)と呼ぶべきだろう。

30分立ち読みしただけなので、うろ覚えのところもあり、十分に読み取れていない部分があるかもしれません。