メトリクスについての質問に対する回答

メトリクスについての基本的な質問をいただいたので、解説しておきます。

JSTQBの教本を読んでいると、「メトリクス」という単語がまま出現します。
単語が使われる割に、「メトリクス」が意味するところが説明されないので、
意味がわかりません。
シラバスの用語集も見ましたが、測定基準? なんの? って感じです。
大変申し訳ありませんがご教授願えないでしょうか。

ぜひスクエアリングサービスで提供している用語集も活用ください。「metric」はISTQBの用語としても登録されています。「メトリクス」の定義は以下のようになっています。

メトリクス(metric):
測定(計量)で使われる尺度と方式。[ISO 14598]
A measurement scale and the method used for measurement. [ISO 14598]

メトリクス=measurementと考えていいと思います。日本語では「測定」とか「計量」と訳されます。measurement scale=measure=尺度と訳されます。また、ほとんどの場合、メトリクス(Metrics)=メトリック(Metric)として扱われています。メトリクスは複数形ですので各メトリックの総称という意味合いが大きいでしょう。このあたりの用語の曖昧さは、SWEBOKでも指摘されています。ちなみに、私はSWEBOK派ですので、計量/計量尺度という表現を好みますが、JSTQBCMMなどでは測定/測定尺度という訳語を採用しています。

上記の定義のようにメトリクスには、測定法/計量法と、そのものさしである測定尺度/計量尺度がセットであることがお分かりになるかと思います。長さを測るのにものさしが必要なのと同じです。長さをはかるのにノギスやマイクロメータを用いる人もあるでしょうし、センチメートル単位のおおざっぱな巻尺を用いる人もあるでしょう。また1回の測定で終わる場合もあれば、10回測って平均値を採るという場合もあるでしょう。このように、単に長さといっても計測の対象と目的によって、方式と尺度が異なります。

計量に関する本などを調べてもらうとわかるのですが、計量の値には、計数、比率、分類、間隔などがあります。単に個数をカウントするのが計数です。個数を何らかの母数で割ったり、分類ごとに計数したり、ヒストグラムのように一定間隔で計数したりといろいろです。前述の長さの例だと、単に長さを正確に測るだけでなく、測った長さを短い/長いで分類したり、10センチ未満、10センチから1メートルまで、1メートル以上といった範囲で計数したり、割合を求めたりすることも計量であり、メトリクスです。

メトリクスは、計測の対象をどのような方式と尺度で測るかを示すものであると分かっていただけますでしょうか。

テストにおいてもさまざまなメトリクスがあります。たとえば、テスターの数というメトリクスがあってもいい訳ですし、テスターの平均年齢というメトリクスがあってもいいのです。システムテストを担当した30代の女性テスターが検出した欠陥の数というメトリクスがあってもいいのです。組み合わせは膨大ですので、組織やプロジェクトで本当に必要としているメトリクスに絞って計測する必要があることが分かるかと思います。

代表的なメトリクスは、テスト密度、欠陥密度、欠陥検出率などです。

理解いただけましたでしょうか。