JSTQB Advanced試験の危惧されるところ。

【2011/05/17追記】この記事は「AL試験の注意事項」の方にまとめておきました。

【2011/07/24追記】「JSTQB Advanced模擬問題(170問)」の提供を開始しています。

先日、c_riverさんにコメントをいただいたので、今夏8/27に実施されるAdvanced試験(テストマネージャ編)について、リスクを整理してみた。個人的には、現時点ではまだ合格する自信がないのと、以下のような危惧もあり、今夏の受験は見送るかもしれない。時間が取れて、学習が捗れば、受けるかもしれない。

 ■シラバスが古く、FLとの不整合がありそう!
 ■対応した用語集が出ていない!

(1) シラバスが古く、FLとの不整合がありそう!

JSTQBのアナウンスによると、今夏のAL試験は、ALのシラバス(2007.J02)、FLのシラバス(2011.J01)、用語集(V2.0.J02)の3つがベースとなる。ところが、ALのシラバスは4年前の古いものであり、その間FLの方は2回改訂されて今のバージョンは2011に到っている。ちなみに、ALのシラバスはISTQBでも同じバージョンである。その点は一時期のFLのシラバスのようなISTQBとJSTQBでの差異という問題は、いまのところない。FLのシラバスの日本語版は、誤訳が多く品質がいまいちであり、多くの学習者が翻弄されてきた経緯がある。なんとか改善していただきたい意図から、先日まで独自にレビューを行ってきた訳だ。

ALのシラバスとFLのシラバスの整合性は大丈夫なのだろうか。ALのシラバスの品質は大丈夫なのだろうか。これから学習を兼ねながら、精査していきたいと思う。まだほとんど読めていないので、現時点ではいいとも悪いとも言うことはできない。FLの改訂にもあった、テスト対象とテストベースの関係、相互運用性テストや正確性テスト、経験ベーステスト、テスト戦略とテストアプローチなどの整合性は大丈夫なのだろうか。

ただ、ALのシラバスは、ざっとみた感じでは文体も非常にしっかりしており、FLのような突込みどころがないようでもあり、期待できる感じがする。機能性テスト、非機能テストについては、セキュリティとユーザビリティの扱いに気をつければ、FLとのマッピングは容易にできそうだ。一方、欠陥ベースの分類がALに加わったが経験ベースとの差異が明確なのか、SWEBOKにあるような利用ベースの分類が依然としてないままだが運用プロファイルテストの収まりどころはどうなっているのかなど、はっきりしないように見えた。ただし、今夏の試験はテストマネージャ編だけなので、これらテストタイプやテスト技法(ALシラバスの4章と5章)は、範囲外となる。

【2011/05/20追記】ALのシラバス(日本語版)をひととおり読んでみた。やはり、素直に理解できないような翻訳の箇所も結構みられるし、用語に統一感がないものもあり、レビュー不足と言われても仕方ない。ただ、FLのシラバス2011との不整合という点では、気づいた点は、唯一、テスト戦略とテストアプローチの扱いだけだった。FLのシラバス2011の見解を採用すべきだろう。それ以外には、不整合の観点で問題となりそうな記述はないと思う。また、別途報告したい。
【2011/07/31追記】ALのシラバス(日本語版)について「ALシラバスのレビューメモ」をまとめています。

ALのシラバスが古く、改訂が近そうに見えると、すぐには試験対応の参考書籍も出版されないだろう。仮に出たとしてもシラバスの改訂が近そうだと、買うのもためらわれそうだ。ロードマップが提示されるといいのだが。
【2011/07/31追記】雑誌「ソフトウェア・テスト PRESS」の総集編に特集があります。「「ソフトウェア・テスト PRESS 総集編」を立ち読みしてみる。」を参照のこと。

(2) 対応した用語集が出ていない!

用語集については、JSTQBに見解をうかがいたい気分だ。ベースとせよと言っている用語集(V2.0.J02)はISTQBのもの(V2.1)より古く、Advanced対応の用語の多くが含まれていないままだ。2010/04の追加・修正分が反映されていないのだろう。ISTQBのV2.1の用語集には、FLとALに対応した用語が収められているが、JSTQBの最新の用語集では2010/04に追加されたAdvanced対応の用語が登録されていないのだ。今後、試験間近になって改訂版をリリースしなおすのか、このまま突っ走るのか分からないところだ。ISTQBとの差異をどう扱うかの見解を示してくれるといいのだが。

ちなみに、ISTQBのV2.1の用語集で追加されたAdvanced対応の用語は60件以上はあるようだ。一応、訳したものはある。以下のリンクから検索できるので参考にしていただきたい。うまく検索できない場合はWord:に「tag:2010/04」と入力して検索してください。ちなみにAdvanced対応の用語は「tag:Advanced」で検索できるようにしています。

http://squaring.jp/term/search.do?cid=03&word=tag:2010/04

ただ、現時点では用語集にもなく、シラバスにも記述がなければ、JSTQBのAL試験の対象外ということになるので、注意が必要だ。そのうちに改訂されるのかもしれず、気が抜けない。ちなみに、Version 2.1 April 1st, 2010に追加された用語は以下のものだ。80件ばかりある。ほとんどがAdvanced対応の用語であるが、一部はFoundationを補強したと思われるものもある。


・ accuracy testing
・ acting (IDEAL)
agile manifesto
agile software development
・ assessment report
・ assessor
・ balanced scorecard
・ call graph
・ causal analysis
・ cause-effect diagram
・ change management
・ charter
・ checklist-based testing
・ clear box testing
・ codependent behavior
・ content-based model
・ corporate dashboard
・ critical success factor
・ critical testing processes
・ CTP
dashboard
・ dd-path
・ Deming cycle
・ diagnosing (IDEAL)
・ EFQM excellence model
・ emotional intelligence
・ establishing (IDEAL)
・ extreme programming
・ fishbone diagram
・ Goal Question Metric
・ GQM
・ hyperlink test tool
・ IDEAL
・ indicator
・ initiating (IDEAL)
・ Ishikawa diagram
・ lead assessor
・ learning (IDEAL)
・ lifecycle model
・ load testing tool
・ manufacturing-based quality
・ maturity level
・ maturity model
・ Mean Time Between Failures
・ Mean Time To Repair
・ mind-map
MTBF
MTTR
・ Pareto analysis
・ post-project meeting
・ process assessment
・ process model
・ product-based quality
・ project retrospective
・ quality gate
・ Rational Unified Process
・ risk category
・ RUP
・ scorecard
・ SCRUM
・ session-based test management
・ session-based testing
・ Software Process Improvement
・ SPI
・ standard
・ STEP
・ structure-based test design technique
・ suitability testing
・ SUMI
・ Systematic Test and Evaluation Process
・ test deliverable
・ test improvement plan
・ Test Process Group
・ test process improvement manifesto
・ test process improver
・ Total Quality Management
・ TPG
・ TQM
・ transactional analysis
・ transcendent-based quality
・ user-based quality
value-based quality
WBS
・ Work Breakdown Structure
用語集については今後、FLとALの用語を1つにまとめてしまうと弊害もでてきそうだ。まとめるなら、これはAL用の用語だということを個々に明示しておく必要があるだろう。そうしないと、FL受験者の負荷が増えてしまうからだ。すでに用語集では、FLでは絶対出題されないであろう用語も結構な数、見受けられる。

以上だ。