よいモノが売れるのではなく、買いたいモノが売れるとは。

買物について調べてみた。「買物欲マーケティング」という本をAmazonで480円で売っていたので購入して読んでみただけだ。そこでは「よいモノが売れるのではなく、買物したいモノが売れる」と言っていた。昔は、作れば売れた(プロダクトアウト)時代があり、それがよいモノでないと売れない(マーケットイン)の時代へと進んだ。そして、今ではよいモノでも売れない時代になった。何が売れるのか。買物したいモノが売れ、買物したくないモノは売れない。ショッパーインの時代だ。よいモノという視点から買物したいモノという視点にシフトしてきているのだ。「モノ欲」から「買物欲」へのシフトだ。以前は、モノを安く手に入れることが目的だったが、今は買物自体が目的になってきて、主役が買物で結果がモノといってもいい。モノからプロセスへ、モノに対する満足度よりも、買物という行為の満足度へのシフトだ。

シフトといっても勿論、完全なシフトではない。買物=買物欲+モノ欲、と捉えられている。近年、モノ欲よりも買物欲の割合が非常に大きくなってきたことを示している訳だ。お客は、モノそのものだけでなく、モノを手に入れる前のプロセスに楽しみを見出している。そのことを忘れると、モノは売れないことを提示している。「買物したいをつくり出し、買い手とモノの出会いをつくり、そのモノの魅力に気づかせ、そのモノが欲しいをつくりだす」ことだ。「モノが欲しい」と思わせる前にやるべきことが一杯ある。

モノ欲とは、モノに対する欲求であり、AIDMA(Attention, Interrest, Desire, Memory, Action)で表現される。モノを知り、理解し、好きになり、欲しくなり、手に入れる流れだ。買物欲とは、買物自体の体験に対する欲求であり、買物という体験の品質に対する満足度を求めることである。買物欲は、モノとの出会いのインプレッション、プロセスの良さ、決定の瞬間の感動などで計れる。モノの性能は「使う」プロセスでの性能であるが、買物欲は「買う」プロセスでの性能に左右される。買物欲を満たさなければ「買う」行動には至らない。

単に消費者(consumer)として捉えるのではなく、消費者は買物客(shopper)-->購入者(parchaser)-->使用者(user)の3段階で変貌するものとして捉える必要がある。買物には無意識の行動が多い。商品を買ってしばらく経ってすでにその商品の使用者と変貌している段階では、いくら巧みに聞き出そうとしても買物客としての自分の意識・行動をリアルに正確に振り返ることはできない。モノの使用者をヒアリングするのではなく、第3者的に頭で考えるのでもなく、現場において買物客が感じた気持ちを読み取ることが必要だ。と語られていた。

ソフトウェアやサービスに当てはめてみる。不特定多数の利用者を想定した、競合の多いパッケージ製品やサービスには勿論、あてはまるだろう。製品やサービスをさらに売ろうして、いくら製品を購入した人やサービスを申し込んだ人にヒアリングしてもダメなのかもしれない。サイトのトップページから直帰した人、申し込みフォームの途中で操作をやめた人を含めて、買物客(shopper)や購入者(parchaser)である段階でのリサーチが重要となる。また、製品やサービスの素晴らしいスペックをいくら語ってもダメということだ。モノ欲だけでなく、買物欲をそそるような工夫を怠ってはいけないし、むしろ重視しなければならない。