へのかっぱ#2

「へのかっぱ」が私の中に定着した理由を思い出した。あれは20年くらい前になる。

「へのかっぱ」は「へのへのもへじ」からの連想だったかもしれない。よくいたずら書きしていた。こっそりと他人の印刷された資料やノートの端に目立たないように「へのかっぱ」と文字を書いておくのだ。それだけ。持ち主が読み返した時に気づくかもしれないし、まったく気づかないかもしれない。ただ、気づいたときの「なんだこれ!」というほのかな意外性がきっと楽しめるはずだと確信していた。

実際、ある友人はその資料を小さなテーブルの上に置いて、お客さんと向き合って打合わせしている最中に、二人同時にその資料のその意外な字面に気づいたらしい。その1点に目が釘づけになる。一方は訳分からずとりあえずさらっと流そうとし、他方はなぜ「へのかっぱ」なのか、前後の文脈から理由を探ろうとする。しかし、お互いに深く追及することもできないし、あえて解説もできない。この意外な字面「へのかっぱ」だけがもやもやと脳裏に焼きつく。このように「へのかっぱ」のいたずら書きは適用される。

「へのかっぱ」はその意味合い、音の響きとゴロの良さ、おならと伝説の河童という夢と現実の組み合わせ、すべてにおいて完成度の高い言葉・格言だと思う。