物流
今日は物流のドメインの学習をした。まず物流、ロジスティクス、通運、運輸などの用語の定義はなんだろうということから始めた。
物流に関する用語で初めて聞くものもあった。たとえば「バン出し」「アソート」「アパレル検針」など。「バン(van)出し」は荷役(にやく)の1つでコンテナから貨物を出すことだ。Vanning/DevanningのDevanningのことだ。「アソート(assort)」は流通加工のサービスの1つで商品の詰め合わせ作業のことだ。「アパレル(apparel)検針」は文字通りだった。流通加工のサービスの1つでアパレル衣料に針が刺さったまま残っていないかをチェックする作業だ。そもそもロジスティクス(logistics)とはよくいうが、日本語ではいまだに「兵站(へいたん)」と訳されている。
本題に戻るが、ロジスティクス・通運・運輸の階層/包含関係を敢えて表現するなら以下のようになる。
SCM (supply chain management) +-- ロジスティクス (logistics) +-- 物流 (physical distribution) +-- 通運 (transportation) (※貨物の荷役・保管も含む) +-- 輸送・運送・運輸 (transport/freight/shipping) +-- 海運 (marine transport/sea transport/shipping) +-- 陸運 (overland transport/land transport) +-- 鉄道運輸 (rail transport) +-- 空運 (air transport)
「物流」は生産物を生産者から消費者へ引き渡す活動であり、生産物の移動・保管を主体としている。「物的流通」の略だ。「ロジスティクス」は生産者・加工者・販売者を密に繋いだ調達・供給を主体とし、全体最適化を目指す包括的な経済行為をマネジメント面から強調したものである。サプライチェーンプロセスの一部である。
通運と運輸の違いをみてみる。もともと、運輸は運送だけであり、通運は貨物の荷役や保管も含んでいたようだ。日本の運輸は、国鉄(JR)の貨物取扱駅を拠点とした配送から始まる。国策的会社である日本通運が元祖なのだ。
運送事業 +-- ■運輸 # トラックによる小口貨物の輸送専門業 | +-- ■商業便 # 会社関係の集配 | +-- ■宅配便 # 個人宅を専門に集配 | +-- 宅急便 # ヤマト運輸の登録商標 +-- ■通運 # 鉄道貨物輸送の両端末に関わる集荷、配送、荷役など | # 通運事業法(1989年廃止)により免許を取得した事業者 +-- ■引越し輸送
日本通運に続いては、ヤマト運輸が民間企業として2番目に古い。「宅急便」はヤマト運輸における宅配便の商標登録だ。日通が行っている宅配便は「ペリカン便」、佐川急便の宅配便は「カンガルー便」だ。ヤマト運輸の登場が早かったことと全国的にもシェアを多く占めることから「宅急便」が一般的に広まってはいるが、「宅配便」が一般的な小口貨物配達サービスの用語ではある。ちなみに「魔女の宅急便」はヤマト運輸がスポンサだったためだ。日通の「ペリカン便」は2008年10月をめどに郵便局の「ゆうパック」と事業統合される。
ヤマト運輸は宅配便を開業としたので2:8と商業便の割合が小さく、佐川急便は商業便として開業したので現在でも9:1と商業便が多くを占めている。ヤマトと佐川は対照的だ。
物流はロジスティクスの部分という表現は実はおかしい。エンジニアリング的にいうならば「作業分野(ディシプリン)」がロジスティクスであり、「活動」が物流である。ロジスティクスは14の作業領域、物流は6つの活動で体系化されている。
ロジスティクス (Logistics) | +-- ■顧客サービス (Customer service) +-- ■需要予測 (Demand forecasting) +-- ■流通コミュニケーション (Distribution communication) +-- ■在庫管理 (Inventory control) +-- ■マテリアルハンドリング (Material handling) +-- ■受注処理 (Order processing) +-- ■部品・サービス支援 (Parts and service support) +-- ■工場・在庫拠点選定 (Plant and warehouse site selection) +-- ■調達 (Procurement) +-- ■包装 (Packaging) +-- ■回収 (Return goods handling) +-- ■廃棄 (Salvage and scrap disposal) +-- ■貨物輸送 (Traffic and transportation) +-- ■倉庫・保管 (Warehousing and storage) 物流 (物的流通=PD:Physical Distribution) | +-- ■輸送:各ノード(工場や倉庫や小売店など)間の運送 | +-- トラック輸送 # 一般的な企業間での貨物輸送 | +-- 貸切トラック輸送 # 荷主依頼のチャータートラックで貨物輸送 | +-- 特別積合せ輸送 # 複数荷主から集荷の貨物を混載輸送 | +-- 航空・船舶輸送 | +-- 鉄道輸送 | +-- 集荷/配送 +-- ■保管 | +-- 入荷/入庫 | +-- 保管 | +-- 管理 | +-- ピッキング | +-- 仕分け | +-- 出荷/出庫 +-- ■荷出し/荷役 (港湾、空港、貨物取扱駅、工場・倉庫内において) | +-- 積み込み/積み出し | +-- 積み下ろし | +-- バン出し (Vanning/Devanning) +-- ■包装/梱包 +-- ■流通加工 | +-- アソート(詰め合わせ)/店舗振分け | +-- 検品/出荷時検査/アパレル検針 | +-- セット組/ギフト包装 | +-- 修繕/組立 | +-- 値札付け/ラベル貼付/専用伝票作成 +-- ■物流情報処理
「物流」に対して「商流」がある。生産物が生産者から消費者に流通する過程における所有権や貨幣や情報などの流れのこと、つまり帳簿上の取引を指す。商流と物流を分離することがビジネス上で重要となる。「商物分離」とも言われる。
ネット情報でも物流各社のサービスはこれらの体系にもとづいて語られているものが多い。物流もかなりエンジニアリングとして成熟してきているようだ。まだ計量とプロセス改善がどの程度進んでいるのかは掴めていない。第1弾としては、以上。