羊を数える

息子が、最近不眠症というほど大仰ではないが添い寝していても「パパ、眠れない、眠れない」と訴えるときがあるのだ。子供なりに精神的なストレスや興奮があると、いろいろ考えてしまうのだろう。それでも1〜2時間も付き添って横になっていれば寝入ってくれるので大したことではない。私など朝まで眠れないことなど度々ある。特に39度の発熱状態で不眠症になったときは厳しかった。※闘病記を参照。

子供に「眠れないときは羊を数えるんだよ」と教えてやった。「目を閉じて。パパがこれから話すものを思いうかべてごらん。いいか。広い野原があるよ。草がいっぱい生えた野原だよ。遠くに家があるよ。家に近づいてみると羊が顔を出しているよ。あっ、羊が家から野原に駆け出してきたよ。あっ、またもう1匹できたよ。2匹だね。あっ、また3匹目も出てきたよ。いいか、そんなふうに羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹と数えていってごらん、そのうち眠くなるからね」と。

しばらく子供の横顔を眺めながら、こちらもうつらうつらとしていると、子供が「パパ、やっぱり眠れない。羊を100まで数えたら、野原に一杯になって、もう入りきらなくなったよ」と。

ああ、どんな野原をイメージしてたんだ。野原に羊を並べてたのか、お前。

むしろ「空(くう)」をイメージさせてやった方がよかったか。私の場合、「空」をイメージするときは、ふわふわの半紙に墨で「空」の1字が書かれたものを、雑念の上に貼り付けて覆い隠すようにしている。「ハニャハラミ」と書かれたお札を貼り付ける要領だ。空(くう)をイメージしていても、しばらくすると雑念が思い浮かび、そのイメージに置き換わる。それに直ちに「空」の1字を貼り付けて覆い隠すのだ。それを延々と繰り返す。ただこれは、ハイリスク・ハイリターンである。不眠から解放されて寝入る場合もあるが、安息感から余計に目が覚める場合もある。

結局、眠れないときは何をイメージするば効果的なのか。一般に、羊を数えればいいといわれているのだからなんらかの統計的な根拠はあるのだろう。他にいい方法も知らないので、次回からは、単に羊が視界の中を走り抜けていくように数えさせよう。