BABOK 2.0 #2 CBAPハンドブック

IIBAにメンバ登録したら早速「CBAPハンドブック(2009/06/22)」のPDFが届いた。$95の支払の領収書も届き、日本支部からもメンバ登録が済んだ旨のメールも届いた。日米(※本部はカナダ)とも対応は実に速い。

CBAPは、IIBAが認定する「Certified Business Analysis Professional」というロールだ。IIBAは、CBAPという認定資格を広め、その資格の認定や維持のための教育などで利益を得ようというビジネスモデルなのだ。このモデルは、プロジェクトマネジメント協会(PMI)が認定しているPMP(プロジェクトマネージャ)やITコーディネータ(ITC)、ITIL、COBITなどでも採用されている。小さいところでは、UMTP、ISTQB(JSTQB)、XMLマスターなども同じようなモデルといえるだろう。特にCBAPは、PMPのモデルにそっくりなのだ。ちなみにあまり人気がないように見えるITCだが、ITCの知識領域を見るとBABOK+PMBOKITILということになる。

なお参考までに、CMMIはこれらとはビジネスモデルが異なるといえる。SCAMPIのアプレイザやCMMIのインストラクタを養成して稼ぐ意図はあまりなく、企業に対してCMMI成熟度という格付けを受けさせることで成り立っているはずだ。CBAP、PMP、ITC、ITILなどは個人で認定されるものだが、SCAMPIアプレイザなどは単に個人というよりその所属企業(SEIパートナ)と一緒に養成/認定されると考えたほうがいい。

CBAPがどの程度認知され普及するかは不明だが、PMPほどの資格にはならないように思える。PMPは体系(PMBOK)に基づいて、それなりのプロセスを確立して遂行していけばよいのでその能力を問うような認定資格は適合しやすい。一方、CBAPの領域は、属人的な個々のノウハウが期待される側面もあり、コンサルタントはそこで差別化しようとしているはずだ。とはいえ、動向は見ておく必要がある。

CBAPハンドブック

CBAPハンドブックに何が書かれているか紹介しておこう。CBAPハンドブックは、IIBAの組織についての説明とCBAPの認定プロセスについての情報を提供している。以下の構成だ。ほとんどの情報はIIBA日本支部のHPから日本語で参照できる。http://iiba-japan.org/cert.phpを参照のこと。IIBA日本支部のHPに見られない情報のみを補っておこう。


 1 CBAPハンドブックの概要
 2 IIBAの概要
 3 BABOKの概要
 4 CBAP認定の概要
 5 CBAP認定要件
 6 CBAP認定プロセス
 7 プロとしての責務

4 CBAP認定の概要

Certification(認定)の定義はいろいろだが、一般に、認定組織が個人の知識・経験・スキル・専門的技術を承認することとされている。所定のスキルや知識を保持し資格要件を満たしていることを実際にデモンステレーションしてみせることで認定が行われる。CBAP認定プロセスには、IIBAで指定される要件に応じて、ビジネス分析の資格要件を満たす経験・知識・能力を保持していることのデモンステレーションを含んでいる。

CBAP取得者は、ビジネスソリューションを決定するために組織のビジネスニーズを識別することができる専門家だ。CBAP取得者は、ロールを遂行できる有能な個人として、また成功プロジェクトに不可欠な要員として評価される。CBAP認定プログラムは、個人の資格要件を認定するためのISO-17204に準じて設計されている。認定の申請者は認定試験を受けるためにIIBAメンバになる必要はない。最初の認定では上級ビジネス分析者だけをターゲットにするが、将来の認定ではそれより低いランクのビジネス分析者のニーズに対応することを検討中だそうだ。認定試験は現在英語のみで提供されていて、他の言語には将来対応するとのこと。

5 CBAP認定要件

CBAP認定要件として、実務要件(Work Experience)、知識領域要件(Knowledge Areas)、教育要件(Education)、プロとしての開発要件(Professional Development)、推薦状要件(Reference)を規定している。

(1) 実務要件として、10年以内で7,500時間(=5年間)のBABOK知識領域に関連したビジネス分析の経験が必要である。BABOK知識領域に関連した業務とは、ビジネス要求の収集や文書化、BAの指導・BAの計画・BAドキュメントのレビュー、組織でのBA方法論やベストプラクティスの開発、BA教材の開発を含んでいる。しかし、BA活動の補助的な管理(リソース管理・進捗管理など)、BAトレーニング講師、関連ツールなどの販売、プロジェクト管理、テスト、プログラミングの実績は含めないとある。BABOK知識領域ごとに計数可能な作業とできない作業が一覧されている。微妙なのが「Solution Assessment and Validation」だろう。ソリューション自体の設計・テスト・欠陥分析などは含められないが、ビジネス分析者として関わるレビューや支援は含めることができる。
※7,500時間はPMIでも同じ実務経験が設定されている。

(2) 知識領域要件では、6つの知識領域のうち4つについて、最低900時間(=6ヶ月間)の実績が証明できる必要がある。
※7,500時間は自己申告でリストアップすればいいが、900時間はきちんと証明できないといけないということだろうか。IIBA日本支部のHPでもはっきり書かれていない。(1)との関係が適切に表現できるのだろうか。

(3) 学歴は高卒相当以上であること。
PMPでは大卒なら実務経験が少なくてよいのだが、CBAPは一律高卒以上としか明記されていない。学歴は関係ないというコンセプトのようだ。将来、上級ビジネス分析者だけでなく、より低いレベルの認定も行いたい意図があるためかもしれない。

(4) 4年間で最低21時間のプロとしての開発(Professional Development)が必要であり、開発の中身はビジネス分析や基礎能力に直接関連したものでなければならないし、申請日までに完了していなければならない。Professional Developmentとは、専門教育を受けて自己の能力を高めよということらしい。日本でどんな具体的な教育コースが提供されているのかは不明だ。
PMPでは35時間の教育受講が義務づけらているので、それに相当するものだろう。
※日本でも3社が行っていることがわかった。教育プロバイダ(EEP)を参照のこと。

(5) 推薦状要件とは、申請者の実績を証明する推薦状(Reference)を提示することだ。最低2つの推薦状を提示する必要がある。キャリアマネージャ、内部/外部の顧客やCBAP取得者(既にCBAP認定された人)にお願いすること。キャリアマネージャはIIBAでは、申請者の年間実績のレビューを提供できる責任をもった人と定義しており、プロジェクトマネージャは申請者のキャリアマネージャになるとは限らないとしている。
※この要件を満たすのは難しいだろう。まだ日本にはCBAP取得者はいないだろうし、英語で書いてもらうのだろうし、頼める人を探すのは大変だろう。PMPでも同様のことを行っているがプロジェクトマネージャというロールは認知されているので書いてもらいやすいが、ビジネスアナリストとしての実績を評価してもらい推薦状を書いてもらうのは日本ではかなり厳しいだろう。

6 CBAP認定プロセス

試験のキャンセルポリシー、試験準備の提案、試験当日の手順、CBAP認定証の授与、再試験、CBAP認証の維持と再認証、CBAP認証の休止と脱退、候補者とCBAP認定者の監査、異議申し立ての手順を説明している。IIBA日本支部のHPに説明がある。

7 プロとしての責務

組織のコンプライアンスを遵守しなさい、プロとして行動しなさい、プロとしての向上心を持ちなさい、顧客や公共への責務はよく考えなさいと言っている。一般的な話だ。責務では、プロとしての品格・経験・実行力、また利害の衝突(Conflict of Interest)や禁止される場面を把握しておきなさいと言っている。こんなところでプロとしての自覚を強調するあたりもPMPとよく似ている。特に「利害の衝突(Conflict of Interest)」はPMPでも重視されているポイントだ。