ノウハウとはどんなもの?

ノウハウとはどんなものか、ノウハウを展開するためのプロセスはどのように体系化されるかをいろいろと調べて考えてみた。まだ拙い情報だか、紹介しておこう。

ノウハウとはどんなもの?

■ノウハウは、特許などで公開せずに、組織内に秘匿しておく技術である。組織の価値向上に成果をもたらすもので、さまざまな意味や価値をもった知識(データ・情報・知恵など)を包括したものだ。

■ノウハウは、タスクを割り当てられた担当者がタスクを実行するために適用する手法・技法・ツール利用法に関する知識である。もっと粒度の細かい、技法やツール利用での個々の考慮点・留意点などをノウハウという場合もある。

■ノウハウは、過去の共体験から得られたタスク遂行の知識を表現したものであり、タスクで実施すべき作業が「プロセス定義」として記述されるのに対し、そのタスクで利用するノウハウは「ガイダンス」として文書化される。過去の成功事例から導かれたベストプラクティスをノウハウとする場合と、過去の失敗事例を教訓としてノウハウとする場合がある。

■ノウハウは、タスク遂行に関する品質要件を満たすことが目的であり、適用することにより一定の効果がなければならない。品質要件はプロセスに対するものとプロダクトに対するものがある。プロセス要件としては、タスクの効率性・セキュリティ、タスク成果物の正確性・完全性・信頼性などがある。プロダクト要件は、開発対象のプロダクト(製品やサービス)に要求されている種々の品質要件である。

■タスクで利用可能なノウハウには、一般に選択肢が与えられる。プロジェクトやプロダクトの特性によって最適なノウハウを選択して、タスクを遂行することになる。

■ノウハウは、情報の1形態であり、ナレッジマネジメントの対象である。共有するノウハウはタスク遂行に役に立つ情報であるが、情報共有で扱う情報では直接役に立つがどうかを問わなくてよい。情報共有は顧客と開発者の間にも適用されるが、ノウハウ共有は原則、組織内で適用する。

ノウハウを展開するためのプロセス

ノウハウ展開のプロセスは4つの領域で考えてみる。開発→展開→活用と管理である。開発→展開→活用の一連の流れを総称的に「展開」と呼ぶことにする。ロールは大雑把に生成者・利用者・管理者のみを挙げてみた。以下にはプロセスの定義に相当する部分しか挙げていない。つまり手法・技法といったノウハウについては挙げていない。ノウハウを開発するための手法、展開するための方法などはいろいろ考えられる。ノウハウ共有会議やワークフローシステムなどなど。

(1) ノウハウの開発
ノウハウ開発のプロセスは、個人のノウハウを部門やプロジェクトのノウハウとして認知するまで、個人知を形式知とするまでである。共同化(Socialization)のプロセスの一部であり、共体験などによって暗黙知を獲得するプロセスである。主アクタはノウハウ生成者である。ノウハウ開発は、ノウハウの引き出し、分析、記述、妥当性確認の活動からなる。要件の開発と同等に考えるべきである。

ノウハウは、識別する・切り出す・抽出する・特定する・導出するなどとさまざま表現されるが、ノウハウは積極的に開発するものであるという視点で捉えるべきである。ノウハウ開発のプロセスには、表出化(Externalization)のプロセスも含んでいる。得られた暗黙知を共有できるよう形式知に変換することも開発の一部分である。ノウハウを組織で統一された一定形式で記述し、検証・妥当性確認を行って、公開可能なノウハウへと洗練させていく。また、連結化(Combination)のプロセスも含んでいる。ノウハウが成熟してきたら、形式知のノウハウ同士を組み合わせて新たなノウハウを創造することも開発である。

(2) ノウハウの展開
生成されたノウハウを必要とする利用者に配布・通知するプロセスである。共同化(Socialization)のプロセスの一部であり、獲得した暗黙知形式知に変換したものを、想定される利用者に伝達するプロセスである。主アクタはとりあえずノウハウ管理者である。ノウハウ展開は、ノウハウの蓄積、配布・通知、利用者からの探索の活動からなる。ノウハウの展開の方式には大きく分けて、PUSH型でブロードキャストする方式とPULL型で利用者から検索・参照させる方式がある。また双方向にノウハウを交換できる共有の場を提供する方式も挙げられる。

(3) ノウハウの活用
利用者が参照したノウハウを担当のプロジェクトやプロダクトに活用するプロセスである。内面化(Internalization)のプロセスであり、利用可能となった形式知をもとに個人が実践によってノウハウを体得するプロセスである。主アクタはノウハウ利用者である。ノウハウ活用は、ノウハウの参照、活用、評価・フィードバックの活動からなる。

(4) ノウハウの管理
ノウハウ開発→展開→活用の仕組みを維持管理するプロセスである。常に一連のプロセス監視・制御・評価を行い、改善を図る必要がある。主アクタはノウハウ管理者である。ノウハウ管理は、展開の実行、監視・制御、展開の評価、報告、セキュリティ管理・変更管理・構成管理などの活動からなる。

ノウハウ展開に対する要件

ノウハウ共有は、情報共有・ナレッジマネジメントに対する要件を網羅し、それらのベストプラクティスを踏襲しているべきである。例えば、以下のような要件などである。
 ■提供者が書き込んだ情報の活用状況を見れるようにすること
 ■提供者が使いやすくすること
 ■利用者が使いやすくすること
 ■関係者全員が参加できること
 ■強力な推進力を必要とすること
 ■体系化/構造化して管理すること
 ■タスクに有効なノウハウが関連付いていること(タスク担当者が参照・活用しやすい形態)

過去のナレッジマネジメントシステムの構築で失敗したことがある。要求開発風にいうならば、正しくないものを作ってしまったということだろう。本当に成功しているナレッジマネジメントシステムというのは、存在しているのだろうか。まず、ガチガチに作りこむと失敗することは見えている。