要求交換フォーマット(ReqIF)を調べてみた。(4)

tacohachi2011-09-09


先日の記事に続いて、RIFとReqIFの関わりについて調べてみた。以下の記事も参照のこと。

RIFはドイツのHIS(Hersteller Initiative Software)という組織が策定したものだ。Herstellerは「メーカー」という意味のドイツ語らしい。Audi, BMW, DaimlerChrysler, Porsche, Volkswagenの5社で構成されており、自動車メーカー主導でソフトウェアの標準化を目指して設立されたようだ。HISは2005年に設立され、2006年にはRIF1.0を公開している。2008年に改訂され、現在はRIF1.2が最新ということになる。一方、ReqIFは、2011年4月にOMGがReqIF1.0として公開したばかりだ。

日本でのHISに対抗する組織がJASPARなのかもしれない。HISとJASPARのHPを覗いてみると、字面だけだが似たようなワーキンググループ名で活動していることがわかる。2004年9月設立され、トヨタ、日産、ホンダ、デンソー豊通エレを中心に100社以上が加わっているようだ。歴史はHISより若干古い。日本は標準化が苦手なんだとつくづく思いさせられる。

  • ドイツ: RIF, HIS, MKS Integrity
  • アメリカ: ReqIF, OMG, IBM DOORS/Eclipse RMF
  • 日本: ReqIF(?), JASPAR(?), 仮想ツール(?)

MKS Integrityは、MKS社(カナダ)で開発された要求管理+構成管理+変更管理のための統合環境を提供するツールのようだ。アプリケーションライフサイクル全般を総合的にサポートする「ALMソリューション」を強調している。プロジェクト管理、テスト管理、運用管理まで包含しているようだ。おそらく、MKS IntegrityがRIFを採用/推進したことで、RIFが欧州で浸透したのだろう。2011年4月にReqIFがリリースされてからは、MKS Integrity, IBM DOORS, Eclipse RMFもReqIFへの対応を表明している。

RIFとReqIFの仕様上の差異、また進化してきた経緯をみると、どうもそれぞれが独自に進化するというより、やはりReqIFに一本化される可能性の方が高いように思えてきた。Eclipse RMFがReqIFだけでなく、いまさらRIFにも対応するというのは、よくわからないところだ。まだ市場にはRIFの資産も多くあるのだろうし、ReqIFの浸透までに時間がかかるので、それまでの過渡的な対応ということだろうか。

Eclipse RMFに関連して、ATEGO社にExpertというEclipse IDEプラグインのツールがあるようだ。Eclipse RMFに先行するツールのようで、Windowsで動作する。2006にExpert 1.0をリリースし、2011にはExpert 2.3に進化している。リッチテキストはPictures/OLEに対応し、DOORSにも対応しているらしい。Eclipse RMFとATEGO ExpertのHPでツールのモックを眺めてみると、非常によく似ている。RIFやReqIFに準じて要求記述ツールを作成すると、どれも似たようなUIに落ち着くということだろうか。

スパークシステムズのEAでは、EA本体に組み込むというよりReqIF用のアドインとして独立に開発し、利用者がオプションとして取り込めるようにする可能性が高そうだ。
【訂正】スパークシステムズはRaQuestという要求管理ツールで対応すると言っているだけのようで、まだEAで対応するとは明言していないかもしれない。早合点でした。SysMLに対応しているのだから、ぜひ、EAでも検討して欲しい。EAで対応されたら、きっとReqIF用のアドインになるのでしょう。